
屋外に都合の良い電源コンセントがない場所で、オフグリッド(太陽光発電)による小型のアクアポニックス(水産養殖と水耕栽培を合わせた循環システム)を構築しました。
自作するにあたり、いくつかの失敗を重ねて余計な出費が発生しました。これから自作に挑戦する人が同じ失敗を避けるため、試行錯誤を経て構築したシステム設計と、具体的な水槽の作り方をまとめました。
オフグリッドアクアポニックスの失敗談と対策
最初に、私が実際に経験した失敗とそこから得た対策をまとめます。
バッテリー容量と発電量の計算ミスによる夜間停止
初期段階では「25Wのソーラーパネル」「128Wh(12.8V 10Ah)のリン酸鉄リチウムイオンバッテリー」「消費電力7Wの水中ポンプ」という組み合わせで運用を開始しました。
計算上は、日照時間を9時間、夜間などの無発電時間を15時間と想定し、夜間に必要な電力(7W × 15h = 105Wh)をバッテリー容量(128Wh)でカバーできると考えていました。しかし、実際に稼働させると夜間にシステムが停止し、朝になっても自動で復旧しないことがありました。
原因は、充電を行っている昼間の時間帯も水中ポンプが常時「7W」を消費し続けていることを見落としていたためです。昼間の消費分と夜間の充電分を同時にまかなうには、想定以上の発電量が必要でした。25W of ソーラーパネルでは、曇天時などの出力低下も加わると発電能力が不足していました。
高品質インバーターの待機電力によるロス
12VのDC(直流)バッテリーからAC(交流)100Vを取り出すためにインバーターを使用しますが、ここに注意点があります。
正弦波インバーターであっても、インバーター自体の回路を維持するために「10Wから15W程度の待機電力(自己消費電力)」が常時発生します。3Wから7W程度の小型水中ポンプを動かすために、その消費電力を上回る待機電力をインバーターに消費されるため、バッテリーが短時間で放電してしまいました。
小型システムにおいて、100Vへの変換を伴うインバーターの導入はできるだけ避けたいところです。
土を使った栽培でのカビと腐敗
水耕栽培用の土壌として「不織布ポットに入れた通常の土」を使用したところ、土が常に水分を過剰に吸い上げてしまい、乾く間がないため3日ほどでカビが発生し根腐れを起こしました。アクアポニックスの栽培スペースには土を使用せず、ハイドロボール(ハイドロコーン)などの多孔質素材を敷き詰めるのが適しています。

自作サイフォンの挫折と垂れ流し式への移行
ペットボトルなどを利用したベルサイフォン式(一定の水位になると一排水される仕組み)の自作に挑戦しましたが、水流の微調整やパイプの傾き調整が難しく、頻繁にサイフォンが機能しませんでした。

最終的にはサイフォン機構を廃止し、オーバーフローした水を常に下のエリアへ自然落下させる「垂れ流し式」のシンプルな配管に変更しました。この方が水漏れや動作不良のリスクが低くなります。
接続部の水漏れと不適切な防水箱選び
トロ船や水槽に穴を開けて配管を通す際、グルーガンで隙間を埋めようとしましたが、経年劣化で剥がれてきて水漏れを塞ぐことは困難でした。結局、配管周りの水漏れ対策に、専用の防耐水用コーキング剤を使用して対処しました。
また、精密機械であるチャージコントローラーやバッテリーを保護するための屋外防雨ボックスとして「未来工業のウォルボックス」を購入しましたが、内部寸法がバッテリーのサイズと合わず使えませんでした。今は餌箱入れになっています。
自作で防雨箱を作って使用していましたが、試行錯誤してバッテリーを増設したので入らなくなり、樹脂製アウトドア収納ボックスの底に穴を開けて配管を通す方法が、コストと防水性、作業面で実用性がありました。
現在は以下のようになっています。

稼働を安定させるシステム構成と機材仕様
失敗をもとに、ロスを抑えたシステム構成が以下です。
インバーターを排除した「USBダイレクト給電」
バッテリーの電力を効率よくポンプに伝えるため、インバーターを排除しました。
チャージコントローラーの本体に搭載されている2基のUSBポート(DC5V出力)を利用します。給電用のUSB延長コードを使って届かない方に配線し、水中ポンプとエアーポンプに直接DC5Vを供給します。これにより、インバーターの自己消費電力を排除し、変換効率のロスを抑えた設計を実現しました。
100Ahリン酸鉄バッテリー1台による可用性の向上
試行錯誤の中で追加していったので12.8V 30Ahのバッテリーを2台購入して並列接続する構成にしていますが、30Ahバッテリーを複数購入するのは導入コストの面で割高になります。
そこでこれから購入を考えているのであれば、最初から「GOLDENMATE 12.8V 100Ah」のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを1台導入した方が安くて管理がしやすいです。これにより、導入コストを抑えつつ、一週間程度雨が続くような悪天候時でもシステムを動かし続けるための容量(1280Wh)を確保できます。
使用機材リスト
ソーラーパネル
LVYUAN 50W 単結晶ソーラーパネルセット(新型HC2410チャージコントローラー搭載)
チャージコントローラーに給電用のUSBポートが標準装備されており、システムの中核となります。
配線周りも揃っているので便利です。
バッテリー
GOLDENMATE 12.8V 100Ah LiFePO4バッテリー(リン酸鉄リチウムイオン)
容量と安全性の高いリン酸鉄バッテリーを1台で運用した方がいいです。
水中ポンプ
マリンテックオリジナル マイクロ循環ポンプ M5-4MC(USB電源・可変流量式、吐出量4L/分、DC5V仕様)
USBから直接給電でき、設置環境の高さに合わせて流量を微調整できます。
エアーポンプ
水作 モバイルAir1000 USBstyle US-28(USB電源)
USB給電で駆動する静音設計のエアーポンプで、水槽内の酸素濃度を確保します。
給水ホース
トラスコ中山(TRUSCO) 透明ホース クリア 8×10mm TTM810C10
水中ポンプから上部水槽への給水ラインには、内径8mm・外径10mm of クリアホースを使用し、取り回しを容易にしています。
ケース
アステージ 収納ボックス Xシリーズ アクティブストッカー 600X ブラックグリーン 幅60×奥行38×高さ33.3cm
30Ahを並列で2個使用しているので実際に使っているのは「400X」の小さいものですが、100Ahのバッテリーを使用する場合は、横幅が足りないので少し大きなケースが必要になります。
プールライナーで作る「飛び出し防止」自作水槽の設計と設置
アクアポニックスで飼育する魚が大きくなると、音や振動、網を入れた際の刺激でビックリして水槽の外に飛び出してしまう事故が発生します。魚の保護と広さを確保するため、水槽をプールライナーで自作しました。
プールライナーによる水槽拡大に必要なもの

- プールライナー(1.5M × 2M、厚さ0.3mm以上の高密度ポリエチレン製)
- 枠用の木材(水圧がかかるため、2×4材や厚手の合板を推奨)
- 防腐用の塗料や外壁用サイディングボードの余り(地面の湿気・雨対策)
奥行き45cm、幅105cm、高さ約45cmの寸法を目安に木製の枠組みを作り、内側にプールライナーを敷いてタッカー等で固定します。片側の側面板を少し低く設計しておくことで、排水口の位置を自然に低く調整することができます。
飛び出しと落ち葉を防ぐ網戸ネット
水槽の上部には、網戸用のネットを枠に合わせてカットし、グルーガンやステーで木枠に貼り付けたフタを設置します。これにより、魚の飛び出し事故を防ぎつつ、屋外飼育での落ち葉やゴミが水槽内に混入するのを防止できます。
循環と濾過を両立する配管・排水構造
システムの水流は、以下のステップで自然に循環・濾過されるように構築しています。
水槽から栽培エリアへの給水
水中ポンプ(マリンテック M5-4MC)によって下の水槽から汲み上げられた水は、トラスコ中山の透明ホース(8×10mm)を通って上部の栽培エリアへと給水されます。
柔軟な透明ホースを採用することで、水槽のレイアウト変更やメンテナンス時の取り回しがスムーズになります。

その後、自動的に下の水槽へ流れていきます。
不織布ポットの植木鉢へ直接落ちる自然落下排水
水槽からオーバーフローして排水される水は、配管を通ってそのまま「不織布ポットの植木鉢」へと直接落ちる構造にしています。
この構造を採用することで、不織布ポットに植えた植物へ、魚の排泄物を含んだ飼育水が直接注がれます。

栽培エリアのレイアウトと植物の固定
以前は栽培スペース全体で不織布ポットを使用していましたが、不織布の隙間から細かな根が大量に飛び出して排水口を詰まらせる原因になったため、基本的にはハイドロボール(ハイドロコーン)を敷き詰めたエリアへ直接植える構造に切り替えました。
ただし、実験的にお茶パックに少量の土を詰めてレタスなどを育てる方法や、倒れやすいネギやニラを固定するために部分的にハイドロボールを厚く盛るなどの工夫をしています。
常に水が供給されている状態になっていますが、水槽のエアーがついていれば意外と問題なく育ってます。ただ、やはりハイドロコーンに厚さがないので、ある程度根っこが伸びてきて大きくなってきたら地面に植え替えています。
YouTube動画
雰囲気だけ動画にしました。
まとめと今後の課題
インバーターを使わず、チャージコントローラーのUSB端子から直接ポンプ類を駆動する設計により、変換ロスと待機電力を抑えたシステムが完成しました。60Ahのバッテリー容量を確保したことで、悪天候が続いてもポンプが止まる懸念を軽減しています。
現在の課題は、飼育している魚やエビの数が少ないため、排泄物由来の栄養分が植物に十分行き渡っていない点です。今後は生き物の数を少しずつ増やし、植物の成長速度を見極めながら、さらなる生態系のバランス調整を進めていきます。
また補足で、上の段が25L、下の段が60Lのトロ船を使用しているのですが、水槽を作った影響で、下の60Lのトロ船が必要なくなってしまいました。現在はエビを育てている感じになっています。
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